神の守り人 来訪編、帰還編

バルサは、つぶやくようにいった。
「よい人をすくってくれて、悪人を罰してくれる神には、まだ一度も出会ったことがない。」

上橋菜穂子・著。偕成社


とかくカッコいい女用心棒にして短槍の達人“バルサ”さんの活躍するシリーズの4巻。
バルサさんも気がついたら三十と…二歳でしょうか。まだまだ引退は無さそうな。
最も、引退するより早く死んじゃいそうな予感がシリーズを追うごとに強くなります。
此度はシリーズ初めての2冊構成で、読み応えも充分。
どうせ最後まで一気に読まないと気がすまないので、暇な日に一気に読む事にしました。


このシリーズの見所は*1異世界情緒溢れる世界描写。
これに加えて、国境を越え民族・文化が異なるとベースは同じものの途端に様変わりしてくる
超越的存在の描写*2が、この物語の肝だと思います。
あちらの国では精霊とされるものが、こちらの国では神と呼ばれ、
あちらでは敬われるものの、こちらでは疎まれ…そこに共通するのは超越的存在への恐怖、だろなあ。
その行動原理や存在理由なども個体により大分異る、彼らの存在と人間との関わりが
シリーズを通して物語の根幹となっています。


今回描かれるのは、神と呼ばれる存在と、神を自身に内在させることになる少女“アスラ”の物語。
サブタイトルにあるとおり、行きて帰りし物語でした*3

*1:バルサさんのカッコよさは置いておきます

*2:基本的に「現実世界と重なるように存在するもののほとんどの人は認識できない異世界」と「その世界にいる存在」っ感じでどの国でも描写されます。もっとも海の向こうでは、まるで神様も違うみたいなんですけどね

*3:サブタイトルでは「来て帰ってる」気もしますが、気にしないで下さい